ダイニングの改装にともなって、ドアのオーダーを素敵なご夫婦から頂きました。
ヒヤリングでは、具体的な要望はなくこちらから提案して決めていくことに。
そこで、好きなインテリアや好みのイメージなど聞いて、自分なりに部屋の雰囲気に合うデザインを提案しました。
そこで気に入ってもらったのが黄金比の図を取り入れたデザイン。
※黄金比とは自然界に隠された不思議な比率で、オーム貝の渦模様やシダ植物の渦巻きの黄金比は有名です。
人にとっても最も美しい比とされており、絵画や建築物に使われているようです。
1:1.618の長方形を正方形に分割していき、その対角点を曲線で繋げものが黄金比の図です。
ドアのデザインはこの図を四つに合わせています。
実は、この案を提案したとき実際にこの形ができるのか半信半疑。
そこで、完成までしばらく時間をもらい、試作から挑戦することに。
なんといっても、難題はRが徐々に小さくなっていくのをどのように割れず曲げるのか。
しかも材は、曲げ木に適しているとは言えない米松です。
そこで曲げるために治具を作って、材を蒸して早速トライ。
予想どおり、上手くいかない。小さいRは割れ、大きなRはなんだかいびつ。
そこで、材の蒸し方を変え、アイロンとアルミホイルを使って蒸すことに。
この方法だと、蒸し機に入れて治具にセットするよりも、材の乾燥を抑えてくれ
曲がるまで材を蒸した状態に保ってくれます。
(この方法は、アイロン曲げと言って兵庫の木工作家さんが考えられた方法です。
すごいアイディアで、シンプルな方法なのに成功率は高く、曲げ木の可能性が広がる。すばっらしいアイディア)
治具を改良して、アイロン曲げでトライ。
最初よりは、だいぶ曲がるようになったけど、やはり割れが数か所でてしまう。
また、治具の作りなおし。もっと正確に綺麗に曲がるように工夫しないと。
ピンを差して曲げることを辞め全て面で抑えて曲げを形作る事に。
何度かトライして、どうにか曲がるようになったけど、やはり割れがどこかで出てしまう。
どうやら問題は曲げる方法にあるようなだ。
もう一度、曲げ木の基本に戻って考えると、太い材を曲げる時に使う鉄の帯板を
2回転するような曲げ木に鉄の帯板を使うのは
困難と勝手に判断していました。考えを改めて思いついたのが結束用PPバンド、
これなら自由な形に沿わせて使えるのでは。
熱いうちにいっきに曲げないと、綺麗に曲がらない。
治具を回しながら曲げていきます。
全部が成功するわけではないけど、成功する確率が高くなった。
蒸しの時間を変えてみたり、できるだけ目が真っ継ぐな材を使うなど工夫して、
どうにか理想の形に曲げることに成功。
一晩、治具にセットしたまま乾燥させて、枠に組んでいきます。
綺麗に曲げるまで、苦戦したけど最終的に曲がってよかった。
曲げ木でそうとう時間を使ってしまった。ドアの制作を急がなくては。。